幸せの種

ミーナちゃんは、数日間入院していた。

せん妄から抜け出すための治療のためということだった。


先生達は、琉君とミーナちゃんのことを誤解してしまっている女子に、本当のことを話してくれた。

ミーナちゃんには持病があり、そのせいで時々現実とそれ以外の区別がつかなくなってしまうこと。

ちしま学園に戻ってこなかった理由は、他の児童養護施設で病気の治療をしていたからであること。

琉君がさくらハウスに行ったのは、受験勉強に専念するためであること。

琉君と小さい時から仲が良いわたしに嫉妬して、嫌な幻覚が見えてパニックになってしまったこと……。


ミーナちゃんはこの後、病気の治療ができる児童養護施設へ移ることになった。


あの言い争いからわたしは、ミーナちゃんと会えないままだった。

仲直りすることもできず、そのままミーナちゃんは行ってしまった。


もしも、わたし達がここではない普通の家庭で暮らしていたとしたら、どうなっていただろう。

わたしと琉君は付き合うことができたかも知れない。

ミーナちゃんは病気にならなかったかも知れない。

ミーナちゃんとわたしは、同じ人を好きになってしまったけれど、仲の良い先輩・後輩でいられたかも知れない。

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