幸せの種
季節はあっという間に過ぎ、冬休みに入った。
大晦日から三が日にかけて、ちしま学園は一年で一番人が少なくなる。
みんな帰省してしまうから、先生達の人数も少ない。
さくらハウスにいる人たちも、先生達のお正月休みの間だけ、ちしま学園に戻ってくる。
髙橋先生のミニバンに乗って、さくらハウスの六人がちしま学園に合流した。
もちろん、その中には琉君の姿もあった。
「懐かしいな~。ほんの四ヶ月くらいしか離れていないのに」
玄関に一歩足を踏み入れた琉君は、そう言って嬉しそうに壁にかけられたオブジェを見ていた。
「千花、元気そうで良かった」
「琉君もね」
「冬休みの宿題、終わったか?」
「まだまだだよ~。あとで教えてね」
「おう。まずは荷物しまってくるから」
不自然に思われないような会話を意識しすぎたせいか、何気ない話なのにものすごく緊張した。
久しぶりに聞く琉君の声、笑顔、気遣いが嬉しすぎて、わたしは帰省できない自分の境遇に初めて感謝した。