幸せの種
開花~私~


琉君がさくらハウスへ行ってしまってから、三回目の春が来た。

私達はお互いの誓いを忘れず、早く大人になれる日を待っている。


琉君は高校生になってから、スマホを持つことが許された。

ちしま学園では、高校生から条件付きでスマホを契約してもらえることになっていたから。


まだスマホを持てない私は、それがとても羨ましかった。

どうしても琉君の声が聞きたいと思った時、下校時の人が少ない時を見計らって、通学路にぽつんと置いてある公衆電話を使う。


小さい頃、高橋先生から『秘密のお守りだよ』と言ってもらったテレホンカード。

どうしても辛くなった時、このカードを使って学園にいる高橋先生と話すための安心グッズだった。

大事にランドセルのポケットへしまいこんだまま使うことはなかったけれど、それが今、私と琉君を繋いでくれるお守りになっている。

リュックのポケットに忍ばせて、本当に辛い時、寂しくなった時だけ、琉君の声を聞くことにしていた。

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