幸せの種
修学旅行がきっかけで、私にも親友と呼べる友達ができた。
今までは、学園の人間関係に振り回され、学校の中でも友達と深い付き合いができなかったけれど、高校にはちしま学園の子が誰もいないということもあって、のびのびと学校生活を楽しんでいた。
琉君は大学二年になり、私は高三の受験生に。
ちしま学園の先生になるためには、少なくとも保育士の資格が必要だった。
できれば、穂香先生のように、小学校以上の教員免許を持っている方が望ましい。
そうすれば、中高生の室担もできるから。
私達のような『社会的養護』出身者向けの、新しい奨学金制度ができたことを、高橋先生が教えてくれた。
「ちーちゃんだったら、きっと奨学生になれると思うよ。条件にぴったりだから」と言って。
目標をもって、しっかりと勉強すること。
同じような状況の子どもに対する、ロールモデルになること。
人生の目標を達成するために、強い情熱をもつこと……。
私ならできる。
そう思って奨学金を創設した財団にレポートを提出してみた。
あんなに苦手だった作文……レポートも、自分の夢の実現のために頑張って書いた。
結果、地元の教育大に合格し、給付型奨学生となり、四年間衣食住に困ることなく勉強できる機会を与えられた。