幸せの種
結実~琉君と私~
私の大学卒業と琉君の医学部卒業が同時だったこともあり、卒業してすぐの三月十四日に私達は入籍した。
なぜか琉君がこの日にこだわったので、理由を聞いてみた。
「もうこれ以上待てないっていうのもあったんだけどさ」
「……そうかも。二人で穂香先生の家に帰省した時から考えたら、もう十年も待ったし」
「それ以外の理由の方が大きいんだけどな。数字をよく見て。何かと同じだろ」
「あ、円周率」
「そう。理系は結構ここにこだわる奴が多いんだってさ。だからこの日に入籍する夫婦、多いらしいよ」
「どうして、円周率がいいの?」
すると、琉君は満面の笑みで答えてくれた。
「永遠に続くから」
「それは、とっても嬉しい数字だね」
「だろ。俺達の家族は絶対に崩壊させない。千花の幸せを、一緒に作りたい」
「私も。琉君と一緒に、幸せな家庭を作りたい」
「しばらくまた離れて暮らさないとならないけれど、もう俺達は夫婦だから。誰からも引き離されない」
「うん。私達、やっと自由になれたね」