幸せの種

陽平はひそひそ声で話し始めた。


「いいかい、ちーちゃん。これはみんなには秘密だよ。ちーちゃんにだけ、特別に選んだものなんだ。幸せを運ぶ猫と、猫のテレカ。公衆電話の使い方は、受話器を上げてからカードを入れるって覚えておこうね」

「うん。ところで、じゅわきってなに?」


――そうだった。今は家庭に固定電話がない家の方が多い。

陽平は慌ててスマホをポケットから出し、公衆電話の使い方を説明した動画を見せた。


「わかった。これ、ちーちゃんのおまもりにするね」

「うん。これは髙橋先生とちーちゃんの秘密のお守り。こっそりランドセルのポケットに入れておくといいよ」

「そうする。ありがと~!」

「じゃあ、穂香先生に挨拶してからお母さんのところへ行こう」

「うんっ!」


職員室では、穂香が『ミーシャ』を抱っこして待っていた。


「ちーちゃん、元気でね。穂香先生から特別なおまじない。――ちーちゃんが、幸せになりますように」


穂香は自分と千花の間にミーシャを入れ、ぎゅっとハグした。

< 31 / 175 >

この作品をシェア

pagetop