幸せの種
陽平はひそひそ声で話し始めた。
「いいかい、ちーちゃん。これはみんなには秘密だよ。ちーちゃんにだけ、特別に選んだものなんだ。幸せを運ぶ猫と、猫のテレカ。公衆電話の使い方は、受話器を上げてからカードを入れるって覚えておこうね」
「うん。ところで、じゅわきってなに?」
――そうだった。今は家庭に固定電話がない家の方が多い。
陽平は慌ててスマホをポケットから出し、公衆電話の使い方を説明した動画を見せた。
「わかった。これ、ちーちゃんのおまもりにするね」
「うん。これは髙橋先生とちーちゃんの秘密のお守り。こっそりランドセルのポケットに入れておくといいよ」
「そうする。ありがと~!」
「じゃあ、穂香先生に挨拶してからお母さんのところへ行こう」
「うんっ!」
職員室では、穂香が『ミーシャ』を抱っこして待っていた。
「ちーちゃん、元気でね。穂香先生から特別なおまじない。――ちーちゃんが、幸せになりますように」
穂香は自分と千花の間にミーシャを入れ、ぎゅっとハグした。