幸せの種
真夏のサンタクロース来訪から四か月が過ぎた。
本当のサンタクロースが来訪する時期になり、ちしま学園のホールには大きなクリスマスツリーが飾られている。
千花は少しずつ落ち着いて過ごせるようになり、やつれていた頬には、ふっくらとした子どもらしいカーブが蘇った。
藤島部屋に笑い声が響くことも増えた。
ーー高橋さん、クリスマス会に間に合うのかな。
穂香は目前に迫ったクリスマス会の準備をしながら、陽平のことを考えていた。
彼は研修のために一週間の予定で東京へ行ったのだが、搭乗予定の飛行機が天候調査のため遅れている。
これから明日にかけて大荒れの天気になるので、欠航の可能性もある。
ちしま学園ではここ数年、職員の中で一番背が高い『高橋サンタ』が、クリスマス会でプレゼントを配ることになっていた。
『サンタクロース』の手紙以来、穂香は陽平に相談することが増えた。
陽平はいつも穏やかに対応してくれるので、相談しやすかったというのもある。
お互いの勤務時間が重ならない時は、メールやSNSでやり取りするようにもなった。
いつしか陽平の人柄に惹かれ始めた穂香だったが、自分とは歳が離れていること、陽平にそのようなそぶりが全くないことから、同僚という立場を崩さないメールを心がけていた。
陽平からのメールも事務的なものばかりで、送られてくる度に嬉しさと寂しさを感じてしまうのだった。