幸せの種
終業式を終え、子ども達が学園へ戻ってきた。
藤島部屋の子ども達は、穂香へ通信簿を渡す。
我先にと通信簿を渡したあと、みんな遊びに行ってしまうのだが、最後に渡した千花は違った。
「ほのか先生、見て見て! すごいでしょ?」
「ホントだ……。ちーちゃん、頑張ったね! 嬉しいよ!」
二学期末の評価は『もう少し』が五つに減った。
『よい』が沢山つけられている通知表を見て、穂香は自分のことのように喜んだ。
「ちーちゃん、これでまた、幸せの種が育ったね」
「うん! ママにも見せてあげたいな……」
「お母さんの準備ができたら、見てもらおうね」
「まだ、じゅんびできないのかなぁ。おそいなぁ」
「お母さんも今、頑張っているから。待っていてあげてね」
千花の母親は現在、保護を受けながら職業訓練に通っているという話だった。
経済的にも精神的にも安定した状態になるまで、千花とは面会しないと言っていると、児童相談所から連絡が来ていた。