幸せの種
到着ロビーの前で待つこと十分、穂香はトレンチコートを着た背の高い男性をすぐに見つけた。
「まさか迎えに来てくれるとは」
そう言いながら、陽平は嬉しそうに微笑んだ。
「サンタさんがいないとクリスマス会は始まりませんよ。それに、高橋さんには沢山助けてもらっていますし」
クリスマス会まで、あと一時間ちょっと。
安全運転がモットーの穂香の車ではギリギリ間に合うかどうか、といったところだった。
「たとえサンタとしてでも、藤島さんが迎えに来てくれて、嬉しいですよ」
「え?」
「今日は忙しいですね。サンタ業務に残務処理。でも、早く終わらせて自分のクリスマスイブも楽しみたいところです」
急ぎましょう、と促されて、穂香は自分が陽平の言葉の意味をぼーっと考えていたことに気づき、慌てて空港を後にした。
「良かった。間に合いそうですね」
ナビに表示された目的地到着時刻を見て、穂香はほっと胸を撫で下ろした。
これなら自分の運転でもクリスマス会に間に合うだろう、と。