幸せの種
「あと三十分ですね。今日の天候には、本当にドキドキさせられましたよ」
「そうでしょうね。ホントは午前中に帰って来る予定でしたよね?」
「はい。でも、遅れて良かった。これで回りくどいことをしなくても済みます」
何のことか問いかけようと思った穂香だったが、陽平の咳払いによって遮られた。
「藤島さん、今、幸せですか?」
突然の、しかも何だか宗教の勧誘のような質問だったが、穂香は以前千花にも似たようなことを聞かれたと思い出した。
答えはあの時と変わらない。
「え? ええと、幸せかどうかは微妙です。でも、幸せになるための努力はしています」
「私も同じです。そこで、藤島さんにお願いがあるのですが」
「私にできることであれば、何でもやらせてください!」
いつも頼ってばかりの穂香に、陽平がお願いしてくることなどほとんどない。ここは恩返しのチャンスだと、請け負うことにした。
「これから私と二人で、幸せになるための努力をしてみませんか?」
「高橋さんと、私で、ですか? それって……ええっ?」