幸せの種
 
母親や義理の父親がここまで気が付かなかったのは、美麗にとって幸いだったのか。

もし、初期に気づいていたとしたら、妊娠の継続は許されなかっただろう。


美麗は不安でたまらなかった。

そんな自分の様子に気づいてもらえないほど、母親が自分に対して『無関心』であることを知ることとなる。

ますます千尋への依存を強めていったところで、突然訪れた別れ……。


それでも千尋を嫌いになれない自分に、美麗は驚いた。

いつか、よりを戻せるのではないだろうかと期待し、その時がくることを切望した。

そのためにも、お腹の子を無事に出産しなくてはならない。


母親に妊娠が発覚したあとは、きちんと病院へ通った。

女の子であることがわかり、名前も自分で決めた。


登校できないまま卒業式を迎え、千尋にもあの日以来会えずにいたが、美麗は耐えた。

いつか千花が、幸せを運んでくれると信じて。

いつか千尋が、抱きしめてくれると願って。

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