幸せの種

それを聞いて、琉輝は驚いた。

みんなが楽しんでいる間、千花は自分が楽しんでいることに罪悪感があり、心の底から笑顔になることがなかったのだと知った。

一歩引いて行事に参加していたのには、そんな理由があったと聞き、千花を見る目が変わった。


――千花はただの泣き虫で頼りない呑気な女子ではなかったんだな。


琉輝は千花に同情した。

そしてあえて笑ってこう伝えた。


「千花は考えすぎ。その場にいない妹や家族のことを悩んだって、解決しないだろ。そんなことを考えるくらいなら、わり算の筆算を覚えろよ」

「ううう~。わり算は苦手なの。立てる数がわかんないんだもん。だから今度りゅうくんも教えてよ」

「いいぞ。その代わり、楽しいことがある時は、誰にも遠慮しないで笑え。うちの親が持ってたマンガにあったけど、おチビちゃんは笑った方が可愛いらしいぞ」

「うん。がんばって笑ってみるから、りゅうくんも笑おう。前、いっしょににげた時、いっぱい笑って楽しかったね。そのあと園長先生にガッツリ叱られちゃったけど」

「また、笑わせてやるよ。……キャンプの夜、チャンスだから」

「楽しみ!」

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