幸せの種
千花に問われて、琉輝も言葉に詰まった。
今の自分たちは、決して幸せではない。
時々、楽しいと感じる瞬間があっても、それはあっという間に終わってしまう。
ホタルがいる方へ近づくため、琉輝はまた木道を歩き始めた。
つられて、千花も歩き出す。
少し歩いたところで、ホタルが沢山飛び交う場所へ着いた。
歩きながらさっきの答えを探していた琉輝は、幸せもこうして探すものなのだろうかと、ふと思った。
「幸せをこれから、探していくんじゃないか」
「幸せは、探さないと見つからないの?」
「探す、というより掴む、なのかな。俺だって幸せなんて知らないさ。だからもし幸せが見つかったら、逃げないようにしっかり掴んでおく」
琉輝は自分のすぐそばに飛んできたホタルを、上手に捕まえた。
両手を籠のように丸くし、指の隙間からホタルが見えるようにして、千花の目の前に差し出す。
「ほら、ホタル。捕まえたぞ」
「……ホタルって、遠くで見た方がきれいかも。幸せも、こんな風につかんでみたら、あまりきれいじゃなかったりして」
綺麗じゃない幸せ。
自分や家族が苦しんでいたのは、間違えて掴んでしまった綺麗じゃない幸せのせいかも知れないと、琉輝は気がついた。