このチャラ男一途につき…
世界が終わったと思った。
そのくらいの気落ちを息に重く乗せて、さらには口に含んだビールのアルコールを絡ませ大きく吐き出す。
チラリ視線を走らせれば大入り満員と感じる居酒屋の店内のカウンター席。
賑やかなるこの空間に場違いなた溜息だとは百も承知。
だけども、ここまで他を忘れ己の喜楽に満ちている中では、自分の溜息など鼓膜を擽る筈もない。
まあ…隣の例外を除けば。
隣でビールジョッキ片手のこのチャラ男。
「……何笑ってるのさ?」
「クックックッ…、いや、だって巴がこの世の終わりみたいな顔してるから」
こっちは結構本気で気落ちしていると言うのに、この男ときたら。
むしろ何でそんなに楽しげに笑うかな?
落ち込んでるからな?全然笑えないからな?なのにそんな風に小馬鹿にしたように笑うとかムカつく!
ムカつくのに気遣いのない駄目さが逆にくるっ!
ああ、もう…この人が自分を好きとか…酒より酔うじゃんか…。