このチャラ男一途につき…


きっと、吐季さんを知らない人はこんな笑みも悪い男の女泣かせなチャラさだと捉えるのだろう。

それを真に受けいちいちときめくのは馬鹿なのだと。

それが武器でそれが毒で、騙されて可哀想にと自分の事も哀れんでいる人がいるのかもしれない。

実際、吐季さんと親しくならなければ自分もその一人に含まれていたと思うのだ。

「でも、当たらずしも遠からずって感じ」

「えっ?……女の人泣かせたんですか?」

「ハハッ、まあ、幅広い意味を含めれば女の子泣かせた事は多々あるかもだけど、そっちじゃなくて、」

ああ、ほら、……魔性。

噂話を自ら肯定しクスクスと笑った姿が何のためらいもなく自然な流れで自分の手を絡めとってくる事にはドキリとする。

持ち合わせている魅力を理解して、それを発揮するように魅せてくる妖しさも。

不思議なのだ。

この目に見つめられる瞬間だけは意識をせずして自分は【巴ちゃん】になりきっているのだから。

そんな自分に追い打ちの様、

「こんな風に綺麗な女の子引っ掛けてるし」

「………………吐季さん、そんなんだからまわりにチャラいって勘違いされて噂話が独り歩きするんですよ」

「あれ~?ときめいてくれない?おじさん結構がんばったのに。やっぱりもう年齢的には若い子にウケないのかなぁ、俺の魅力も」

いや、むっちゃときめいてます。

ときめきすぎて目を合わせてられなくて顔逸らしちゃった程に。

多分吐季さんから見たら、ドン引きして顔逸らしたように映ったかもしれないけど。


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