羊だって、変るんです。
■ ― 回想 ― ■ ---------------------------
お見合い会場の帰りのタクシーの行き先を、杏奈の家にしようと口を開きかけた時、凱が自分の家を告げていた。
それ以降二人は黙ったまま凱の部屋に着いた。
『私、またやっちゃった?』
凱の表情は硬く、会話の無い車内からずっとグルグル考えて、落ち込んでいく。
『勝手に突っ走って凱の事考えずに、迷惑かけた?』
不機嫌なオーラを纏った凱の横顔をチラリと見る。
『私、嫌われちゃった?』
じんわりと涙が浮かんだ時、室内を数歩先を歩く凱が振返り名前を呼んでくる。
無意識に玄関で足が止まっていたようだ。
「あ、ご、ごめん」
慌てて靴を脱ぎ室内に入る。