羊だって、変るんです。
その3
「ただいまぁ!」
「お帰りなさい」
実家の玄関に入って直ぐ、大きな声で挨拶をすると、母の返事が聞こえた。
パタパタとスリッパの音をたててやって来たのは、杏奈よりも小柄な可愛らしい女性だった。
「お母さん、こちらが電話で話した神宮寺凱(じんぐうじ がい)さん。
凱、こっちがうちの母」
「遠い所、良く来て下さいました。杏奈の母です。杏奈がお世話になっているようで」
杏奈の母親とは思えない程若く見え、姉妹だと言っても通りそうだ。
「いえ、こちらこそ杏奈さんには良くして貰ってます。
あの、これ大したものではないのですが、良かったら皆さんで召し上がって下さい」
いつの間に用意したのか、有名店の和菓子の入った紙袋を杏奈の母に手渡した。
「ありがとう。気を使わせてすみません。杏奈、仏様にお供えして来て」
「うん。分かった」