羊だって、変るんです。
さっさと正座してご飯を食べ始める杏奈に驚いていると、母・綾子(あやこ)が嗜(たしな)めるように言った。
「杏奈、凱君にも座ってもらうように言わないとダメでしょ」
「ゴメン。もうお腹減りすぎて死にそうだったから」
「ゴメンなさいね。お腹が空くと周りが見えなくなっちゃうのよ。どうぞ座って召し上がって」
そう言って凱の前に湯気の上がるご飯茶碗を差し出した。
「ありがとうございます。遠慮なく頂きます」
綾子の言葉につい「知ってます」と答えそうになるのを我慢して、感謝の言葉のみに留めた。
凱が食べようとした時には、杏奈の前にあった肉じゃがは綺麗に無くなっていた。
「慌てなくても沢山あるから、喉に詰めないようにね」
苦笑しつつ綾子が台所に戻っていく。