羊だって、変るんです。
生垣があって、周りから見えないが、見上げれば遠くの山も見えるし、目の前の小さな庭も眺められてゆったりと寛げた。
風呂から上がると、浴衣が用意してあったが、凱には着る事が出来ず、羽織って出てきた。
「杏奈」
そっと居間に居る杏奈に声をかけると、杏奈が綾子を呼んで着付けをしてくれた。
「杏奈は出来ないの?」
「うん。私が着ると毎回、死装束(しにしょうぞく)になっちゃうんだよね」
「どうしたら、毎回左前になるの?胴着を着る時と同じじゃない。」
※ 死に装束=死者に着せる装束
着物は右前(着付けでは、最初に体につける方を「前」と表現します。)