羊だって、変るんです。

生垣があって、周りから見えないが、見上げれば遠くの山も見えるし、目の前の小さな庭も眺められてゆったりと寛げた。



風呂から上がると、浴衣が用意してあったが、凱には着る事が出来ず、羽織って出てきた。

「杏奈」

そっと居間に居る杏奈に声をかけると、杏奈が綾子を呼んで着付けをしてくれた。

「杏奈は出来ないの?」

「うん。私が着ると毎回、死装束(しにしょうぞく)になっちゃうんだよね」

「どうしたら、毎回左前になるの?胴着を着る時と同じじゃない。」


※ 死に装束=死者に着せる装束
着物は右前(着付けでは、最初に体につける方を「前」と表現します。)
< 34 / 172 >

この作品をシェア

pagetop