羊だって、変るんです。

杏奈はまだ、楽しそうに会話を楽しんでいた。

その姿を見ただけで、あんなに高ぶっていた気持ちがスッと静まる。

『杏奈だけだ。本当の僕を受けいれてくれるのは』

胸が苦しくなるのをグッと堪えた時、風がふわりと吹いてきて、上げていた髪が下りて、いつもの自分に戻る。

カランコロンと下駄の音を立てながら杏奈の元に向った。

「杏奈」

「え?あ!凱!?来てくれたの?」

凱を見つけて、驚きながらも嬉しそうに傍に駆け寄ってくる。

その姿を見ているだけで、暖かい気持ちになれる。
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