昼休みが終わる前に。
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「……凛々子さん?」
真後ろで私の名前を呼ぶ声がし、勢いよく振り返った。薄暗い教室の中には、松下先生の姿しかなかった。
私は震える唇を開き、先生、と言った。
「3年1組のみんなは?」
「…………」
「誰かひとりでも助かっていませんか?」
先生は心苦しそうにうつむいただけで何も言わなかった。
その沈黙こそが答えだった。心の中を冷たい隙間風のようなものが通り抜ける。
「そうですか」
過去が変わっていないことに対して、もっと取り乱すかと思ったけれど、自分でも驚くほど静かな気持ちだった。
怒りも悔しさも生じなかった。生じたのは、沈み込むような悲しみだけだった。
「ねぇ、凛々子さん」
先生はうつむいたまま言った。
「教室に入った瞬間、窓辺に走っていって両手を伸ばしたけど、あれはやっぱり亡くなったみんなの姿が見えてるの?」
はい、と答えようとして、咄嗟に「いえ、何も見えていません」と言い換えた。