昼休みが終わる前に。


私は息を吸い、もう一度「大丈夫ですから」と言った。そしてゆっくりと前に向き直り、足を大きく前に踏み出した。




キーンコーンカーンコーン……




チャイムの音が辺りに響き渡った。


この音が先生の耳には聞こえていないのだと思うと、不思議だった。それくらいはっきり鳴っている。


私は後ろを振り返り、扉の前に立っている先生に向かって言った。


「ほら、何も聞こえませんし、何も見え——……」


口は動いているのに、自分の声が途中から聞こえなくなった。


次の瞬間、教室の中がぱっと白い光に覆われた。まぶしくて、思わず顔を伏せる。






光がおさまったのを感じ、顔を上げた。


私は十二年前の教室にいた。室内に賑やかな話し声が溢れている。


この不可解な現象に慣れたのか、もう驚いたり動転したりすることはなかった。


時計を見上げると、時刻は今日も12時だった。私は視線を動かして、時間割黒板に書かれている日付を確認した。




【10月20日 金曜日】




時間が止まってほしいと願う私の気持ちなどお構いなしに、日付は当然のごとく一日進んでいる。



< 107 / 233 >

この作品をシェア

pagetop