昼休みが終わる前に。


未来から来たことを一生懸命訴えれば、きっとみんなは私の話を信じてくれる。


だけどね、信じてくれた先には何もないの。


過去は変わらない。


未来にみんなはいない。


自分の中に、静かな諦めが広がっていく。




私は紙袋に手を入れ、中からクッキーを取り出した。


「いっぱい作ってきたから、みんな、よかったらもらって」


「わーい、ありがとう!」

「うわぁ、めっちゃ可愛い」

「食べちゃうのもったいなーい」


女の子たちは私の作った動物クッキーを机の上に並べ、学校にこっそり持ってきているスマホで、パシャパシャ写真を撮り始めた。


あちこちでシャッター音が響く中、私の隣で、唯人がぱくっとクッキーにかじりついた。


「うっまーい! やっぱリリの作るお菓子は世界一だね」

「ちょっと、唯人くん。デザートは普通、食後に食べるもんでしょ」

「そう言う委員長だって、我慢できずに食べてるじゃーん」

「本当だーっ」


みんなが智ちゃんを指差して笑った。ペンギンの形をしたクッキーを頬張りながら、智ちゃんも笑った。



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