昼休みが終わる前に。


「今日はリリの席で食べよー」

「いいね、いいね。じゃあ私は凛々子のとーなり」

「なるほど。じゃあ私は凛々子ちゃんの左隣で」


沙恵ちゃんと智ちゃんは近くの椅子を引っ張ってくると、私の両サイドに置いて素早く座った。


「えーっ、ズルイ! 俺もリリの隣がよかったのに!」

「はい、残念でした。この席はもううちらのものだもんねー」

「だね」


沙恵ちゃんと智ちゃんは意地悪な笑みを浮かべてうなずき合った。


「いいもん。俺はリリの正面に座るから」

「じゃあ俺は仕方なく、お前の横に座ってやるとするか」


和也くんはやきそばパンを片手に、唯人の隣にどさりと腰を下ろした。


「ちょっ、“仕方なく”ってどういう意味だよ」

「そのままの意味だよ」

「まったくカズは素直じゃないんだから。本当は俺の横に座りたくて座りたくてしょうがないくせに」

「バーカ。このやきそば、お前の鼻の穴に突っ込むぞ」


和也くんは袋に入ったやきそばパンを、唯人の顔にぐりぐりと押し付けた。


「あははっ、やめろって」


なんだか、じゃれ合う子犬みたいだった。


ふいにおかしくなって、私はくすくすと肩を揺らして笑った。みんなも大きな口を開け、天井を仰ぐようにして笑った。




そのとき一瞬、


自分が本当に十五歳に戻ったような錯覚にとらわれた。



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