昼休みが終わる前に。


私は材料をキッチンカウンターの上に広げた。十二年前の自分が書いたレシピを脇に置き、ひとつひとつ手順通りに進めていく。


よし、まずはパンダから。


これをこうして……






一度作り始めると、時間を忘れるほど夢中になった。


気がつけば材料をすべて使い果たしていて、とてもひとりでは食べきれない量になっていた。


クッキーの生地を乗せられるだけトレイに並べ、予熱したオーブンに入れた。


十二年前の私は、お菓子を焼いている間に片付けをしたり、座ってひと休みしたりしていたけど、今日の私は、オーブンの前から一歩も動かなかった。動きたくなかった。


自分の作ったお菓子が出来上がっていく工程を、最初から最後まで見ていたかった。




十分ほど経ったとき、生地の端がこんがりときつね色になり、香ばしい匂いがキッチンの中に漂い始めた。


そろそろかな。


いい具合に焼けた頃、オーブンからトレイを取り出した。ひとつずつ丁寧に網の上に並べていく。


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