昼休みが終わる前に。


「リリ?」

「あっ、えっと……私も忘れ物をして……急に思い出して……走って……来たの」


しどろもどろになってしまい、自分でも何を言っているのかよくわからなかった。だけど唯人の方は、「なーんだ、そうだったのか」とすんなり納得していた。


「だったら、一言メールくれればよかったのに。一瞬、凛々子が二人いるのかと思ってびっくりしちゃったよ」


——あははっ、そんなわけないじゃん。


そう笑い返そうとして、声が出てこなかった。唇が震え、涙ぐんでくるのを感じた。


このときの私は、これが唯人との最後のデートになるということを知らない。


もしも……


もしもあの事故がなかったら……


どんな未来が私たちにあったのかな。


十二年経った今でも、変わらずに一緒にいられたのかな?


唯人のお嫁さんになれていたのかな?


もしも唯人が今でも隣にいてくれたなら、


きっと……


こんな悲しい未来なんてみじんも想像させないような、笑い声と笑顔に満ち溢れた未来があった。



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