昼休みが終わる前に。


「違うよ。この場合は、こっちの公式を当てはめるんだよ」

「えっ、マジ? どうして?」


唯人は肩と肩が当たるくらい身体を寄せてきた。


触れている部分が、燃えるように熱くなった。しかしそれは束の間のことで、次の瞬間には何か冷たいものが、さあっと身体の中を吹き抜けていった。


「リリ?」

「あっ、ごめん。えっとね、この場合だとこうだから、こうなって……」


喋りながら、泣きそうになった。


私は必死の思いで涙をこらえながら、自分が数日後に死んでしまうことなど知らずに熱心に話を聞く唯人に、公式の使い方をこれ以上ないくらい丁寧に教えた。


「おぉ、そういうことか! さすがリリ。ありがとう。めっちゃわかりやすかった」


唯人は視線を宿題のプリントに戻し、ふたたびペンを走らせ始めた。 


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