昼休みが終わる前に。
その真剣な横顔は、見惚れてしまうほど美しかった。
美しかったけれど、同時に幼かった。
このときおよそ初めて、自分が死ぬほど恋い焦がれている相手が、まだほんの十五歳の子供なんだということを自覚した。
自覚した途端、切なさが大波のように押し寄せてきて、涙をこらえることができなくなった。
「ちょっ、どうしたの、リリ?」
「急に寂しくなっちゃって」
「えっ?」
「だって唯人は子供のままなのに、私ばっかりが年を取って、私ばっかりがおばさんになっちゃって……」
「俺が子供でリリがおばさん……?」
唯人はきょとんとした目で私を見た。私は頬を伝う涙を流れるままに任せ、その無垢な瞳をじっと見つめ返した。
「私が十二年後の未来から、生前の唯人に会いに来てるって言ったらどうする?」
「生前の……俺?」
私は椅子から立ち上がり、唯人の両頬を手のひらで包んだ。そしてそのまま、彼の唇に自分の唇を重ねた。
懐かしい唇だった。
唯人と交わす十二年ぶりのキスは、はちみつのような甘みに混じって、涙のしょっぱい味がした。