昼休みが終わる前に。
先生の目に、じわっと涙が浮かんだ。
「凛々子さんがそんな風に笑うの、すごく久しぶりに見たわ」
「十二年前にあの事故が遭ってから、私、笑うことを忘れてしまっていました。だけど今日この教室に入って、ある大切な人の言葉を思い出したんです」
「ある大切な人の言葉?」
「『幸せな出来事が笑顔を作るんじゃなくて、笑顔が幸せな出来事を引き寄せるんだ。笑顔でいることは、状況に関係なく選択することできる。すなわち幸せになるのも、不幸になるのも、自分で選択できるんだ』って」
それが過去の唯人が、未来の私に託した言葉なのだと思うと、込み上げてくるものがあった。
またしても泣き出しそうになった。だけど私は笑顔を絶やさなかった。
唯人の言葉を、
想いを、
無駄にしたくない。
「だから私はみんなの分もたくさん笑います。自分が不幸な人間なんだと嘆くのはもうやめて、幸せになる選択をします。天国にいるみんなもきっとそれを望んでいるから」
「凛々子さん……」
先生は胸に手を当て、ほっとしたように笑った。私は頭を下げた。