昼休みが終わる前に。


中学生だった頃、そのお祭りにクラス全員で行った。唯人に告白されたのも、そのときだった。


そういえば事故でみんなを失ってから、一度も行っていない。気持ちが沈んで、とてもお祭りという気分にはなれなかったから。


そうやってこの十二年間、何の楽しいこともないまま、時間ばかりが流れていった。





……今年の夏祭り、行ってみようかな。




私は仰ぐようにして、頭上のカーブミラーを見た。


化粧をまったく施していない顔。


おしゃれとは無縁の野暮ったい服装。


美容院に行くことが面倒で、二年間伸ばしっぱなしにしている髪が、海草のように腰まで流れている。


この髪を、ばっさり切りたい衝動に駆られた。切ったら、新しい自分に生まれ変われるような気がした。


よし、今日は美容院に行こう。


そのあとは商店街で化粧品を一式買おう。


新しい服と一緒に浴衣も買って……


私はカーブミラーに映る自分に、にっこりと笑いかけた。そして前に向き直り、ハンドルを握り締め、力いっぱいペダルを踏み込んだ。



< 151 / 233 >

この作品をシェア

pagetop