昼休みが終わる前に。
【第8章】夏の花火と君の横顔
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翌日の夕方、三時間以上かけて夏祭りの支度を終えた私は、鏡の中の自分と向き合っていた。
昨日美容院で、腰まで伸びていた髪を肩の辺りで綺麗に切り揃えてもらい、前髪も作ってもらった。
髪を軽くしたら印象が一気に明るくなり、派手すぎるかな、と心配していた赤い口紅は違和感なく馴染んでいた。
こんな風に化粧をしたり、髪型をセットしたりするのはいつぶりだろう。なんだか自分じゃないみたい。
唯人に見せたら、なんて言ったんだろう。
可愛いって、言ってくれたのかな。
一瞬、顔が曇りそうになって、私はばちん、と自分の両頬を叩き、ぶるぶると頭を振った。アジサイの髪飾りが音を立てて揺れる。
そんな顔しちゃダメ。
私はきゅっと口角を上げ、鏡に向かって笑顔を作った。
よし、これでいい。
笑顔を保ったまま階段を降り、リビングに入った。ソファーでくつろいでいたお母さんが、浴衣姿の私を見て立ち上がった。