昼休みが終わる前に。


普段はクールな智ちゃんが、わたあめとりんご飴を両手に小さな子供みたいにはしゃいでたなぁ。


和也くんの金魚すくいのうまさにはびっくりしたなぁ。持ち帰りきれないほど取って、私たちに数匹ずつプレゼントしてくれた。


沙恵ちゃんは買ってもらったばかりのスマホで写真を撮るのに夢中で、三歩歩くごとにカメラのシャッターを切ってたなぁ。でも結局、ヨーヨー釣りのプールの中にスマホを落としちゃって、撮った写真全部消えちゃったんだっけ。


唯人は花火が始まる直前、見たこともないような大真面目な顔で、「大事な話があるから、ちょっとこっちに来て」と言って私の手を引いた。後ろを振り返ると、みんながニヤニヤしながら私たちを見ていた。


いつもお喋りの唯人が、そのときだけは無言だった。私の手を握ったまま、怒ったような足取りでどんどん進んでいく。


わけがわからないままついていくと、やがて唯人の足は噴水の前で止まった。


そして私の方に向き直り——




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