昼休みが終わる前に。
お互いにさっと顔を伏せた。しかし強い磁石にでも引き寄せられるように、逸らしていた視線がふたたび重なる。
男性に対して“綺麗な人”っていう表現は、ちょっとおかしいかもしれないけど、それ以外の言葉が見つからなかった。それくらい、綺麗な男だった。
周囲の喧騒が遠のき、私と彼の間にある空間だけ、時の流れが遅くなったように感じた。
その瞳の中にどんどん吸い込まれていくような感覚で。
逸らそう、逸らそうと思っても、私の視線は男に釘付けになったままだった。
見つめ合っていると、彼の背中からすっと女の人が顔を出した。
……松下先生だった。
「あら、凛々子さんじゃないの!」
先生は人混みを押しのけるようにして、こちらに走ってきた。
私はベンチから腰を上げた。