昼休みが終わる前に。
信広さんの姿は人混みにまぎれていき、やがて完全に見えなくなった。
「信広さんって、先生に似てますね」
「えっ、本当?」
「はい。顔も似てますけど、それ以上に話し方とか表情がそっくりです。なのでとても親近感が湧きます」
「そうなのね。よかった……」
先生は前を向き、組んだ手を膝の上に置いて、少し遠い目になった。
「だけど私からすると、凛々子さんとノブの方が似ているわ」
「私と信広さんが……?」
私は首を回して先生を見た。屋台の方から、小さな子供たちが奇声を上げながら走ってきた。噴水の周りにいた鳩がびっくりしたように一斉に飛び立った。
「ううん、やっぱりなんでもない。ノブのこと、どうかよろしくね」
先生は前を向いたまま言った。言ってから、薄く微笑んだ。目尻に深く皺が寄り、彼女の積み重ねてきた年齢と時間の重みが、このとき初めて見えたような気がした。