昼休みが終わる前に。
『もう何の問題もない』
果たして本当にそうなのかな。
信広さんは明るく言ったつもりなのだろうけど、私の耳にはひどく暗く聞こえた。
こちらを見つめる瞳は吸い込まれそうなほど深く、その奥底に静かな悲しみが渦巻いているのを感じ取れる。
信広さんの過去に何があったのかは知らないけど、彼が私と同じように心に深い傷を負っているということは直感的にわかった。
だから先生は、私と信広さんが似ている、と言ったのかもしれない。
「凛々子さんもどうですか?」
信広さんはベビーカステラの入った袋を私の方に差し出した。あれだけいっぱい入っていたのに、すでに半分以上なくなっている。
「じゃあ、おひとついただきます」
「ひとつと言わず、何個でもどうぞ」
「ありがとうございます」
私はベビーカステラを口の中に入れた。