昼休みが終わる前に。


思春期の中学生じゃあるまいし、ただ男の人……それも先生の息子と写真を撮るだけで、なんでこんなに緊張するの?


一度意識し始めると、自分の顔にどんどん血がのぼってくるのを感じた。浴衣の襟元から覗く鎖骨が、妙に艶めかしい。


「そうそう。いい感じ。それじゃあ、いくわよ。ハイ、チーズ」




——カシャ。




カメラのシャッター音が、勢いよく吹き上げられた噴水の音と重なった。


先生は撮った写真を確認すると、満足そうに微笑み、こちらに向かってオッケーサインを出した。


「さぁ、ふたりとも、そろそろ帰りましょうか。凛々子さん、ここまで何で来たの?」

「バスです」

「帰りもバスの予定?」

「はい」

「じゃあ家まで送っていくから、うちの車に乗っていって」

「えっ、でもそんなの悪いですよ。先生のおうち、逆方向ですし……」

「いいの、いいの。遠慮しないで。って、私が偉そうに言ってるけど、実際にはノブの車なのよね」


信広さんはすっとベンチから立ち上がり、私に向かって微笑んだ。


「乗っていってください」



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