昼休みが終わる前に。
私たち三人は、出口に向かう人の波に押されるようにして公園を出た。
駐車場に入ると、信広さんは鞄から鍵を取り出し、黒いワゴン車に近寄った。
カチッと車のドアロックが外れる音がした。信広さんは後部座席のドアを開けた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
車内はじっとりと蒸し暑かった。
信広さんは運転席に乗り込むと、シートベルトをつけ、キーを回してエンジンをかけた。クーラーの吹き出し口からひんやりとした風が、勢いよく流れ出す。
「私がナビ代わりに、凛々子さんの家まで道案内するわね」
助手席に乗った先生が、運転席に向かって言った。信広さんは首を縦に動かした。
「そうしてくれると助かるよ」
「まずはここを出て、最初の信号を左に曲がって」
「了解」
信広さんは静かにアクセルを踏んだ。私たちを乗せた車がゆっくりと動き出す。
慣れた手つきでハンドルを切る信広さんの姿は、大人そのものだった。