昼休みが終わる前に。
もしもみんなも……唯人も生きていたら、私と同じ二十七歳になっていた。立派な大人になっていた。
みんなが大人になった姿を、幾度となく想像してみたことがある。
こんな風に車を運転して好きな所に出かけたり、たばこやお酒を楽しんだり、大好きな人と結婚して家族になったり、そういうことが全部あたりまえで。
人一倍負けず嫌いな智ちゃんは、男性をもしのぐ勢いで仕事して、昇進して、バリバリのキャリアウーマンとして活躍していそうだなぁ。
みんなからバカップルと呼ばれていた沙恵ちゃんと和也くんは、イチャイチャしている暇もないくらい子育てに追われていそうだなぁ。
そして私と唯人は……
「あの、先生」
私は座席から少し身を乗り出した。
「明日、旧校舎を見に行ってもいいですか?」
一瞬、車内に沈黙が走った。ルームミラー越しに、信広さんがちらっと私を見たのがわかった。クーラーの音が大きくなったような気がした。