昼休みが終わる前に。
「なになに?」
「アクセサリー?」
みんなが興味津々の顔で集まってきた。全員の視線が、私の手の中の箱に集中している。
この中に白鳥の絵が刻まれたペアリングが入っているということは、私と唯人しか知らない。
私はゆっくりとふたを開けた。窓から差し込む秋の日差しが指輪に反射して、弾けるように光った。
どっと歓声が上がった。口笛が甲高く響いた。視界が滲んだ。湧き上がってくる涙を切なさと一緒に飲み込みながら、
「うわぁ、可愛い!」
十二年前と同じ台詞を、同じ無邪気さで言った。
唯人は制服のポケットからもうひとつ指輪を取り出し、私の指輪にそっと当てた。
「こうやって合わせると、白鳥がキスしてる絵になるんだ」
「本当だ、素敵。唯人とペアリング、嬉しい」
「喜んでもらえてよかった」
「ありがとう。一生大事に……」
その先の言葉が言えなかった。泣くつもりなんてなかったのに、こらえきれなくなった涙がぽろぽろと目尻からこぼれ落ちる。