昼休みが終わる前に。


「こらっ、みんな! 凛々子ちゃんが主役でしょうが!」


智ちゃんが声を飛ばすと、みんなは口をもぐもぐさせながら、悪気のない顔で私の方を振り返った。


それを見た智ちゃんが、まったく、と溜め息混じりに言った。


「食いしん坊なやつらなんだから」

「あははっ、本当!」


私は目尻に溜まった涙を手の甲で拭いながら笑った。するとみんなも一緒になって笑い声を上げた。




食いしん坊で、元気で、無邪気で、本当によく笑い、よく笑わせてくれる人たちだった。


こんな風にみんなとふたたび笑い合えるなんて、夢の中にいるみたいだった。


もう悩むの、泣くのも、やめよう。


過去も未来も全部忘れて、今、目の前にいるこの人たちと、くだらない冗談を飛ばし合って、馬鹿みたいにはしゃいで、笑っていたい。


神様がくれたこの奇蹟を、ただ噛み締めたい。


「ちょっと、みんな! 主役を忘れないでよーっ!」


私は大きな口を開けて笑いながら、みんなの輪の中に飛び込んだ。



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