昼休みが終わる前に。
どうしてなのかはわからない。
だけど唐突に、この人に本当のことを打ち明けたい、という衝動に駆られた。その衝動に突き動かされるようにして、口が『タイムリープ』という単語を発していた。
「タイム……リープ……?」
「はい。この教室に入った瞬間、チャイムの音が聞こえて、その時計が光り出すんです。それで……」
教室に入ると、一日に一度、タイムリープが起こること。
タイムリープ先の日付は修学旅行の九日前から始まって、こちらが一日経つと、向こうの日付も同じように一日進んでいること。
そして過去の世界に留まっていられるのは、昼休みの一時間だけだということ。
私は自分の身に起きている現象について、全部話した。
私が話している間、信広さんは一度も口を挟まなかった。ただひたすら真剣な表情で、相槌を打ち続けていた。
「そうだったんですね」
話を全部聞き終えた信広さんが発した言葉は、それだけだった。
私の話を否定したり、疑ったりするようなことはしなかった。つまらない励ましや同情の言葉を並べたりもしなかった。