昼休みが終わる前に。
信広さんはうつむき、きつく目を閉じた。そのまぶたが痙攣しているのは、必死に感情を抑え込もうとしているからなのかもしれない。
やがて信広さんは決心したように、はい、と言って顔を上げた。
「実は俺も、過去に大切な人を亡くしてまして。だけど凛々子さんとは違って、俺の場合は事故や病気で亡くしたんじゃなくて、自らの意思によって絶たれてしまった命なんです」
「それってつまり……」
「そう、自殺です」
太陽に雲がかかり、信広さんの顔に暗い翳が走った。私の目は、彼の右手の薬指に留まった。
まさかその指輪って……
信広さんは苦しそうに息を吸った。
「いつも笑顔で明るい子でした。だからまさか自殺してしまうなんて、夢にも思っていませんでした。俺は彼女の一番近くにいながら、何も気づいてあげられなかった。彼女のことを誰よりもわかっているつもりになっていただけで、実際は彼女のこと、これっぽっちもわかっていなかった。俺は……俺は……」