昼休みが終わる前に。


よし、行こう。


私は笑顔でうなずき返し、右足を一歩前に踏み出した。




キーンコーンカーンコーン……




チャイムの音が聞こえ始めた。私は静かに目を閉じた。まぶたの向こうで、徐々に強くなる光。足元が激しく揺れ、めまいがした。






揺れがおさまってから、ゆっくりと目を開けた。視界の先に現れたのは、十二年前の3年1組だった。


みんながそこにいる。


唯人も、


智ちゃんも、


沙恵ちゃんも、


和也くんも。


そこにいるのが当然のことのようにいる。


自分の右手の薬指を見ると、唯人からもらった指輪がはまっている。ついさっきまで少し緩かったのに、今はサイズがぴったりだ。




今日が何月何日なのか、確認するのが怖かった。


私はごくりと唾を飲み込んでから、時間割黒板に書いてある日付に目を向けた。




【10月24日 火曜日】




身体の中を、冷たい隙間風のようなものが通り抜けた。



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