昼休みが終わる前に。
海外より遥かに遠い場所……
あなたたちのいない、十二年後の未来だよ。
そう言いたくなるのをこらえながら、私は顎を引いた。
「うそでしょ。凛々子ちゃん、海外に行っちゃうんだって」
「そんなぁ……」
「マジかよ」
教室の中は、いちだんと騒がしくなった。
沙恵ちゃんがわっと声を上げて泣き始めた。和也くんは唇を噛み締めながら天井を見上げた。私の腕を掴む智ちゃんの手が小刻みに震えている。唯人は言葉を失い、呆然と立ち尽くしている。
中学三年生の子供たちにとって、きっと“海外”というところは、想像もつかないほど遠い場所なんだろう。それこそ永遠の別れを意味するほどに。
だけどね。
たとえ地球の裏側にいたとしても、お互いに生きてさえいれば、またいつか会えるんだよ。
生きてさえいれば……
込み上げてくる涙を、懸命に押し戻そうとした。けれど、できなかった。