昼休みが終わる前に。


タイムリープした先に、おそらくみんなはいない。


それでも構わない、と思った。


私はただあの教室に……


ふたたびみんなに会わせてくれたあの3年1組の教室に、


最後に『ありがとう』と『さようなら』が言いたい。それができれば、もう十分だった。


窓の外に広がっているのは、いつもと変わらない見慣れた田園風景なのに、このときの私の目には、何もかもが初めてみる景色のように新鮮で、穏やかで、木漏れ日の中できらきらと輝いているように見えた。






「ふたりとも、ちょっとここで待っててくれる?」


先生は玄関の鍵を開けると、早足で職員室の方へと歩いていった。


私たち三人以外、まだ誰も来ていないのか、校内の電気は消えていて、朝なのに薄暗い。


先生の足音が聞こえなくなると、沈黙が訪れた。



< 226 / 233 >

この作品をシェア

pagetop