昼休みが終わる前に。


あれは何だったの? 


やっぱり幻覚?


だけど幻覚って、あんなにもはっきりと見えたり聞こえたりするものなの?


もう、わけがわからなかった。


たとえさっきのあれが何だったとしても、せっかくもう一度みんなに会えたのに、泣いてばかりで何も言えなかった。みんなの顔も、ほとんどちゃんと見られなかった。


このまま永遠のお別れなんて嫌だよ。


もっともっと、一緒にいてほしいよ。


私をひとりぼっちにしないで。


まぼろしの中でもいいから、私のそばにいて。


お願いだから、置いていかないで……





私はその場にうずくまって泣き続けた。


床の上に小さな水溜まりができるほど涙を流しても、まだ泣き足りない感じがした。


床に両手をついたまま、顔を上げた。前を向いても、やっぱりそこにみんなの姿はなくて。


しんと静まり返った空気を、外で盛んに鳴き続ける蝉の声だけが埋めている。



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