昼休みが終わる前に。




家に着いたときには、わずかに日が傾き始めていた。


私は汗でベトベトになった身体をシャワーで流した。流しながら、湯気で白くなった鏡に手を伸ばして曇りを拭った。


「うわぁ……ひどい……」


何時間も泣き続けていたせいで、いつもは奥二重のまぶたが、腫れぼったい一重になっていた。


お風呂から出たあと、洗面台にこもって冷たい水で顔を洗ったり、保冷剤で目を冷やしたりしてみたけど、なかなか腫れは引いてくれなかった。


どうしよう。これじゃ泣いたのがバレバレだ。


そろそろお母さんが仕事から帰ってくる。


私はタオルに包んだ保冷剤を持って自分の部屋に戻り、ベッドに横になった。


ちょうどそのとき、


「ただいまー」


タイミングを見計らっていたように、玄関からお母さんの声が聞こえた。ビニール袋がこすれる音とともに、足音が階段を上ってくる。



< 34 / 233 >

この作品をシェア

pagetop