昼休みが終わる前に。


——コンコン。


部屋のドアがノックされた。


泣いた顔を見られたくない。


私はブランケットを口元まで引き上げ、扉に背を向けた。


「何?」


意識したつもりはないのに、やたらぶっきらぼうな声になってしまった。ドアが遠慮がちに開く。


「ごめん、寝てた?」

「ううん、横になってるだけだから大丈夫だよ」

「気分はどう?」

「悪くはないかな」

「スーパーからいくつかお惣菜持ってきたけど、夕飯は食べられそう?」

「ごめんね、今はあんまり食欲ないんだ。もしあとでお腹が空いたら、そのときにもらってもいい?」

「えぇ、もちろん。じゃあ凛々子の分は冷蔵庫に入れておくわね。いつでも好きなときに食べてね 」

「うん、ありがとう」


お母さんもお父さんも、二十七歳のいい年した娘を、いまだに何もできない子供のように扱う。


仕事も家事もロクにしないで寝てばかりいるダメ人間を家から追い出そうともせず、それがまるで自分たちの使命であるかのように、文句ひとつ言わずに面倒を見続けている。


年齢ばかりが積み重なって、ちっとも成長していない私。


いい加減、この親に負んぶに抱っこの状態をどうにかしなきゃ。ちゃんと自分の足で歩かなきゃ。


そう思うのに、できない自分が情けなくて、ますます自己嫌悪に陥る。



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