昼休みが終わる前に。


私の足は、考えるより先に走り出していた。そのまま倒れ込むようにして唯人に抱きつく。


「戻ってこれた! 私、戻ってこれた!」


その場にいた全員が、一斉にこちらを振り返った。


「えっ、ちょっ、急にどうしたの? 戻ってこれたって、何?」

「昨日私、十二年後の未来から来たって言ったでしょ? 教室を出た瞬間、元の世界に戻っちゃって、それで、それで……」

「十二年後の未来? 元の世界? ごめん。リリが何の話をしてるのか、全然わからない。どういう意味?」

「うそ……昨日のこと、覚えてないの?」

「昨日……? なんかあったっけ?」



私と唯人は、言葉の通じない外国人を見るような目でお互いを見た。二人の間に沈黙が落ちる。


そんな馬鹿な。あれだけ泣いて大騒ぎして、覚えてないなんてありえない。


まさか昨日のことがなかったことになってるの?



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