昼休みが終わる前に。
まともに言葉を発することができるようになるまで、少し時間がかかった。私は鼻をすすりながら顔を上げた。
「私、みんなに会ったんです」
「えっ?」
「信じてもらえないかもしれないですけど、本当に会ったんです。3年1組の教室に入った瞬間、時間が修学旅行の少し前まで巻き戻ったんです。私、みんなに『修学旅行に行かないで』って必死にお願いしました。それによって、もしかしたら未来が変わったかもしれないと思って、ここまで走ってきたんですけど……何も変わっていませんでした」
ひと息に言って、先生の言葉を待った。
しかし返ってきたのは、沈黙だった。先生は哀れむような目で私を見ただけで、何も言わなかった。
わかりきった反応だった。
小さな子供じゃあるまいし、タイムリープをしたんだという話を聞いて、はい、そうですかと、簡単に信じてくれるはずもなかった。
気が狂って幻覚を見たんだ、と思う方が普通だった。信じる方が、おかしかった。
私は濡れたティッシュを束にして丸め、ズボンのポケットに突っ込んだ。